自動放送解説① SUNTRAS型放送編 その1
皆さんは、「自動放送」に興味を持ったことがあるでしょうか?次の列車の種別や行先、停車駅など…慣れない人からすればとても役に立つものです。しかし、通勤や通学等で日常的に鉄道を利用していれば、そんなものは必要なくなり、耳に入ってこなくなるものです。ですが、自動放送には旅客へのサービス向上のほかに、鉄道会社の努力の証を垣間見ることができます。この「自動放送解説」シリーズでは、そんな自動放送の隠れた秘密をご紹介します。
この放送は、SUNTRAS型放送の中でも比較的単純な部類に入ります。関西に在住の方なら一度は聞いたことのある放送ではないでしょうか?この放送を担当されているのは村山明 氏で東海道型放送などでも聞くことができました。現在では、JR西日本の近畿エリアをはじめ、関東地方の一部の駅でも聞くことができます。
前置きが長くなりましたが、では「SUNTRAS型放送」とはいったい何のことなのでしょうか。今回はSUNTRAS型放送の基本的な情報をご紹介していきます。
目次
SUNTRAS型放送って何?
SUNTRAS型放送とは、SUNTRASという運行管理システムの中の一つの機能であり、旅客に向けて列車の運行情報や接続の案内などを設定されたダイヤをもとに行います。たとえば、列車に何らかの影響で10分の遅延が生じた時には、駅でその列車の待っている乗客に対し、自動放送や電光掲示板でリアルタイムに遅れを案内します。もし、その遅延によって列車の到着順序が急遽変更された場合には、それに応じて臨機応変に先着案内などを付け加えます。これは、SUNTRASというシステムによって全ての列車(回送・貨物等も含む)の運行が管理されており、列車の走行位置等の情報がコンピューターに集められて、それを基に遅延時の列車の運行計画も決めたりしています(それがそのまま実際の運行に反映されるかは別のお話ですが…)。ですから、当たり前のことですが実際に放送を聞いていると、その通りに列車が来るので、初めて聞いた時には「すげ〜」と感じるかもしれません。
SUNTRAS型放送の特徴
SUNTRAS型放送には大きく分けて2つの特徴があります。
まず一つは、「放送の内容がとても細かい」という点です。SUNTRAS型放送では、種別(列車名)、行先、発車時刻、両数、乗車位置、停車駅、先着・接続案内(※1)、女性専用車に関する案内(※2)など様々な付帯放送(列車の細かい情報)が流れるため、初めてその路線を利用する人にとっても易しく、また、我々音鉄にとってもとても収録し甲斐のある放送です。たとえば京都駅では、列車の到着時の到着放送と呼ばれる放送で通常の内容のほかに、「JR〇〇線、〇〇線、新幹線、近鉄線、地下鉄線はそれぞれ乗り換えです。」というとても丁寧な乗り換え放送も流れ、大変ボリューミーな放送となっています。そのほかにも、特急列車の予告放送(次の列車についての放送)では、特急券が必要ということのほかに、青春18きっぷの利用シーズンには、「青春18きっぷでは、ご乗車いただけません」という放送も流れ、さすがSUNTRASだなと感じさせてくれます。このように多種多様な放送は各駅で設定がなされており、駅ごとに量や内容が異なり、音鉄を楽しませつつも、収集にはとても苦労させられます(うれしい悲鳴ですね!)。
※1:先着案内や接続案内の有無はシステムの導入時期によって異なります。
※2:一部の路線のみ、該当する列車に対し行われています。
二つ目は、「色々なパーツを持っている」という点です。SUNTRAS型放送は、JR京都線やJR神戸線、琵琶湖線、大阪環状線系統、JR宝塚線、JR東西線、学研都市線、阪和線、湖西線などに導入されていますが、システムが導入されている駅に関するほぼ全てのパーツ(〇〇⤵︎や〇〇⤴︎、〇〇です など)を持っていて、急なダイヤ変更にも対応できるようになっています。それだけではなく、システム導入路線を走る列車が直通する路線の行先駅となり得る駅のパーツも持っていて、大阪駅で「品川 行」というパーツも流れたこともありました。しかし、さすがに全部のパーツは揃えられなかったようで、一部対応していない行先もありました。ただ、そのようなケースは極めて少ないです。駅名パーツの他にも、遅れに関するパーツや、行先変更、停車駅変更、両数変更、のりば変更、経由路線変更、臨時に運行する旨の内容まで揃っており、普通の軽微なダイヤ乱れの場合は難なく放送してしまいます。これは過剰ではないか、というパーツの量を全て聞くことはまずないと言っていいでしょう。おそらく、システム導入からまだ一度も使われていないパーツも大変多く存在するはずです。また、システムが稼働を終えるまでに一度もそのパーツが使われない、というケースも起こりうる話ですね。
SUNTRAS型放送の良いところ
SUNTRAS型放送は、沢山の詳細な案内ができますが、それはどんな場面で活用されているのでしょうか。ここでは、良いところを一部は音声も交えていくつか紹介します。また、ここで紹介する内容は、乗客側がしっかりと注意して放送を聞いていると仮定しています。
1.両数を間違えて列車に乗り遅れるという事態を防ぐことができる。
これは特に長い編成の列車が走っている路線に当てはまりますが、たとえば12両編成のつもりで電車を待っていて、来た電車は8両編成で、待っているところよりも遥かに後ろ(JR線の場合、1両20m×4両=80m)に停まったとしたら、ホームが混雑している場合にはスムーズに移動ができずに乗り遅れてしまうかもしれません。そんな時にしっかり放送を聞いていれば、両数と乗車位置も正確に放送してくれるので、乗り遅れるリスクが減少します。
この放送のように〇〇時〇〇分発[種別][行先]行きは●番のりばから発車します。電車/列車は◎量で到着します。[乗車位置]でお待ちください。…という感じで少なくとも2回確認することができます。乗車位置までしつこく(いい意味で)言ってくれるのでしっかり聞いていれば両数の間違いは減るでしょう。
2.急な変更にも対応!
たとえば、上の図のようにA駅とE駅を結んでいる路線のB駅で人身事故が発生してしまったとき、001列車は運転を取り止めざるを得ませんが、E駅からA駅に向かう予定だった002列車は、行先をC駅行きに変更すれば、一応運行できます。このような時に、SUNTRAS型放送はここで発生した行先変更もしっかり案内することができます。また、今回のような行先変更以外にも、運用の都合上両数が変わったり、上の図で例えるならば、運転再開後の一番列車がB駅を通過する快速電車だった時には、場合にもよりますが、混雑を緩和させるため、B駅にも臨時停車することがあります。SUNTRASは、そのような臨時停車にも対応しており、また、逆の場合(臨時に通過)も「〇〇には停まりません」という案内もすることが可能となっています。この他には、のりば変更や経由路線変更(例:サンダーバード号は湖西線での強風の影響でしばしば琵琶湖線経由で運転されます。)があります。しかし、いくら素晴らしいシステムとはいえ、本当に急な変更(出発1分前の変更など)には対応できないこともあります。そこは駅員さんが案内してくれますので、心配は不要です。
SUNTRAS型放送の良くないところ(良過ぎるのが裏目に出てしまっているところ)
何でも案内できる万能なSUNTRAS型放送にも良くない部分もあります。それは、その「万能さ」が裏目に出てしまうということです。列車が大幅に遅延し、路線全体のダイヤも相当乱れている場合、SUNTRASが優秀すぎるが故に、色々な情報を一気に放送しようとするので、たまに放送が矛盾してしまう場合があります。たとえば、路線の最長編成が8両の路線で「12両」と案内したり、行かない駅に先着するという案内をしたりするケースです。これは、元のダイヤの情報と行先変更後のダイヤの情報とを同一のものと勘違いしてしまっていることに起因します。こればかりは、システムの機能向上に期待するしかありません。
(音鉄向け)SUNTRAS型放送収録のコツ
自動放送の中でもトップクラスに録り甲斐のあるSUNTRAS型放送ですが、収録には一苦労する場合もあります。
まず一番重要なことをお伝えします。JR西日本管内の駅ホーム上では、自撮り棒などの長尺物を掲げる行為が禁止されています。そのため、マイクをスピーカーに密着させて収録することが困難な場合が多いです。しかし、棒が地面についていればセーフということなのでとても長い一脚に自立器具などを装着して収録すれば問題ないと思われます。しかし、駅によっては、地面についていても注意を受ける場合がありますので、不安な場合は駅員さんに許可をもらうのも一つの方法かもしれません。また、あまり多くはないですが、スピーカーが手の届く位置に設置されている駅もありますので、最初のうちはそこで収録してみましょう。
次に重要なことは、放送のタイミングです。基本的にSUNTRAS型放送は列車到着の6・3分前に予告放送が流れます。また、接近放送は大体のタイミングを各駅で把握する必要があります。停車中放送は到着2分後から2分おきに流れます。駅によって設定が異なる場合もありますので、収録の際は実際に現地での調査が必要です。また、当サイトの「音鉄レポート」にも放送開始のタイミングを掲載していますので、ぜひご覧ください。
次に、重要というより意識していただきたいことは、「人目を気にしない」ということです。ホームの屋根に向かってながーい棒を掲げている人を見かけたら、誰でもみてしまうものです。話題にもされるかもしれません。しかし、人目を気にしていては、収録のタイミングが遅れたり、目的の列車が収録できなかったりと音鉄を楽しめないので、本当に収録を楽しく、良いものを録りたい!という方は、「人目を気にしない」を意識してみてください。まあ、いずれ慣れてしまうものです。
パート1のまとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。SUNTRAS型放送に興味を持って頂けましたか?パート2以降はマニアックな記事になるかもしれませんが、お読みいただけると嬉しいです。また、当サイトでは、YouTubeの動画のご案内や「音鉄レポート」の投稿していますので、ぜひ下のURLからトップページへアクセスください。
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